実例から学ぶ税務の核心〈第11回〉平成29年度税制改正 組織再編成
週刊税務通信 №3465 平成29年7月10日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。
実例から学ぶ税務の核心
~ひたむきな税理士たちの研鑽会~
<第11回>
平成29年度税制改正 組織再編成関係の改正①
解説
大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾
平成29年度税制改正により,組織再編税制が大きく変更になり,スピンオフ制度が導入された。一見すると上
場企業向けだが,非上場企業でも適用の可能性があるため,制度の内容を確認していきたい。
1 適格スピンオフ制度関係( 法令4の3 )
(1) 制度の概要
村木)平成29年度改正では組織再編税制についても大きな見直しがありましたね。まずは,新設されたスピンオフ制度からです。
1 組織再編成に係る税制について,次のとおり整備を行うこととした。
(一) 独立して事業を行うための適格分割及び適格株式分配の要件を定める。
( 法人税法施行令第4条の3 関係)1 自社株評価通達の改正とその意義
岡野)スピンオフとは,事業を外部の別法人に切り出す手法で,米国では普通に使われている制度です。しかし,今まで日本ではほとんど利用されることのなかった手法ですね。
濱田)平成29年度の政省令が出ましたので,条文を読みながら,内容を確認していきましょう。
内藤)その前に,今回の組織再編税制改正の趣旨について,週刊「税務通信」 №3455 (平成29年4月24日号)の座談会で説明がありましたので,紹介しておきます。
税理士 佐々木浩先生,弁護士 武井一浩先生,税理士 諸星健司先生,新日鐵住金株式会社 合間篤史氏による対談です。
(1) アベノミクスでは,法人税率を引き下げて,課税ベースを拡大するとの法人税改革を行った。
(2) この改革は,所得がプラスの法人にはメリットが生じるが,赤字の法人では負担が増加する。
(3) 赤字の法人や収益性が悪い法人は資本効率を上げるか,事業を他者に委ねるか,やめるかという選択をしなければならない。
(4) 事業を他者に委ねる代表的な手法が組織再編であり,組織再編税制ということになる。
(5) 組織再編税制の間口を広げることでアベノミクスが目指す資本効率を上げることにつながる。
と,こういう論法で説明できるのですね。
白井)では,条文に入る前に,大綱レベルでの,知識の再確認です。
スピンオフは,大企業の利用を想定した再編手法ですね。何故なら,支配株主がいないことが,前提の制度となっています。
岡野)スピンオフには,①事業のスピンオフと②子会社株式のスピンオフの2パターンがあります。
前者①は,「新設分割型分割」又は「新設分社型分割(現物出資)+新会社株式の現物配当」で,後者②は「子会社株式の現物配当」で実行されます。
内藤)支配関係がない前提であれば,改正前ではこれらは非適格組織再編成でしたね。①事業のスピンオフでは,事業関連性などの共同事業要件を満たしませんし,②子会社株式のスピンオフでは,個人株主への現物配当は適格現物分配にはなりません。
これを一定の場合には適格組織再編成にしよう,ということですね。
(以下略)
(熊本本部スタッフ)
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