さくら経革通信 「中小企業白書について」

中小企業白書について

中小企業白書とは、中小企業基本法に基づく年次報告で、2018年版で55回目の発行となります。内容としては、最近の中小企業の動向、課題,当年度の中小企業施策などから構成されており、経済産業省の補助金を含む中小企業政策の指針とも言えるでしょう。

行政の発行物ですが非常に読みやすく、また2018年版は113の事例を紹介するなど、より実践的で活用しやすい内容となっています。

2018年版の概要

中小企業における大きな課題として、生産性の向上ということが挙げられています。

もう少し細かく言うと、

  1. 生産性向上に向けた取り組みを進めていくためには、まず自社の経営課題や既存の業務プロセスの見直しが肝要
  2. 人手不足解消のための、女性・シニア・その他人材の効果的・効率的な活用
  3. IT導入による業務効率化
  4. 維持更新のためだけでない、前向きな設備投資
  5. M&Aによる生産性向上

以上の5つにまとめられるかと思います。

テーマ別分析

さらに細かく分類した8テーマが挙げられています。

  1. 深刻化する人手不足。女性・シニア等の掘り起こしが課題。

    生産年齢人口の減少や少子高齢化を背景に深刻化する人手不足は、今後も継続すると予想されるため、女性・シニア等の潜在的労働力の掘り起こしが重要となります。

    【事例:製造業】シニア人材に限定した求人広告を実施、ひと目で工程が理解できるよう掲示物や作業指示書の文字を大きくし、かつ写真やイラストを増やした。また、シニア人材が操作しやすい工作機械を導入。

    【事例:福祉業】従業員2名の妊娠を機に、出産後も働きやすい職場環境整備に注力。事情に応じて勤務時間を4.5~7.5時間で選択でき、正社員並みの待遇とする「準社員」制度及び「ならし勤務」による短時間勤務を可能とする制度を実施。また、無料託児所を社内に設置したことで、女性が働きやすい職場としての認知度が高まり、資格を持つ人材が殺到した。

  2. IT導入等を行う上でも、業務プロセスの見直しは生産性向上の大前提。

    設備投資やIT導入などの生産性向上に向けた取り組みは、業務プロセスの見直しと併せて実施することが重要です。分析を行うことでより効果的な投資を行うことができますし、場合によっては、投資を行わずに解決できる課題も発見できるかもしれません。

    【事例:製造業】徹底した業務の見える化を行ったところ、金型の交換作業等がボトルネックとなり稼働率・収益力を低下させていることが判明。設備にセンサーを設置し、クラウドを通じて設備の稼働状況を収集・分析するITシステムを構築。これを活用しながら稼働率向上に向けてPDCAを回していった結果、稼働率が約20%向上し、利益率が3.9倍になった。

    【事例:旅館業】業務を洗い出した結果、客室冷蔵庫のドリンク補充や冷水ピッチャーの入替に毎日1時間半も要していたことが判明。有料型の冷蔵庫から通常の冷蔵庫へ変更し、冷水ピッチャーからペットボトルの水を置く形に変更。また清掃業務をマニュアル化した結果、平均して一人当たり30分程度の残業時間短縮になった。

  3. 幅広い業種で多能工化・兼任化の取組みが進展。生産性向上にも寄与。

    特に製造業においては多能工化・兼任化の取組みが進んでおり、9割近い企業で取組みを行っているようです。卸・小売業、サービス業等の非製造業においても、製造業並みの取組みの進展、ひいては兼任化による生産性向上が期待されています。

    【事例:専門サービス業】受注案件に偏りが生じると、特定の調査・検査を行う担当に業務が集中してしまっていた。そこで、従業員のスキルを一覧化(スキルマップ)して見える化することで、スキルに応じて柔軟に他部門に割り当てることが可能になった。その結果、年間の一人当たり平均労働時間が1,500時間から1,400時間に減少した。

    【事例:製造販売業】レジのタッチパネル化や商品管理へのハンディターミナルの導入により、業務時間を短縮。また、業務全般をマニュアル化し、従業員全員がレジや販売、経理、設計等の全ての業務をこなせるよう教育した。その結果、時間外労働の減少に加え、従業員が休みを取りやすくなった。

  4. IT導入のきっかけとして重要なるのは、地元のITベンダーなど身近な相談相手。

    IT導入が進まない原因として、アドバイザーが周囲にいないことが挙げられています。

    【事例:小売業】ITに精通した社員はいないが、長い付き合いのある地元のIT販売会社からIT導入補助金の提案を受け、クラウド給与・就業管理を導入。店舗ごとに紙で管理していた出勤データをクラウド上で管理し、給与計算を自動化することで、毎月の事務が7人日から3人日に削減できた。

  5. 業務領域や一企業の枠を超えて連携することでITの効果は飛躍的に高まる。

    IT導入の効果が期待できることとして、データ連携による生産性向上が挙げられます。データ連携には大きく分けて「業務間連携(財務と労務の連携など)」と、「企業間連携」

    【事例:介護業】クラウド会計のアドバイスができる税理士を見つけ、クラウド会計の導入サポートと経理事務の工程改善を依頼。さらにクラウド給与を導入し、クラウド会計と連携させることで業務効率化。事務代行先が2ヵ月かけていた事務処理が、週30分程度の社内処理で対応可能になったことで、年間約50万円以上の事務代行料が削減できた。

    【事例:製造業】自社内のクラウド活用で成果を上げていた同社は、得意分野の異なる同業他社2社との共同受注を立案。共同受注案件の生産進捗や引き合い状況をクラウド上で3社間共有するITシステムを構築し、顧客向けポータルサイトを設置。年間30件の引き合いがあり、15件の共同受注を獲得した。

  6. 生産性向上のためには前向きな投資が重要。引き続き投資を促進する必要。

    近年の中小企業では設備老朽化等を背景とした維持・更新投資が中心ですが、生産性向上につながる前向きな投資が企業の維持発展には必要です。

    【事例:非鉄金属業】金属鋳造は危険な重労働であり、震災の影響もあって求人難に。そこで、特に危険な工程へのロボットの導入、女性が使いやすい電動式ハンドリフトを導入した。その結果生産性は2.3倍、不良率は10%低減。また、女性が過半数を占めるまで増加した。

    【事例:介護業】人材確保のため、省力化投資による業務環境の改善に取り組む。巡回頻度削減のための見守りセンサーと、身体的負担を軽減するためのパワーアシストを導入し、職員の負荷軽減を図った。その結果、職員アンケートでは多くの職員が「負担が減った」と回答し、ベッドからの転落事故発生件数が30%減少した。

  7. 経営者の高齢化から休廃業・解散が高水準。事業承継等を背景に、中小企業のM&Aは増加。

    廃業せず事業承継がきちんと行われているかどうかの指標として、「廃業対倒産倍率」があります。

    これは、廃業件数を倒産件数で除したものですが、熊本県においては7.8倍(2017年)と、全国平均の3.3倍を大きく上回っています。

    すなわち、熊本県では、事業承継せずに廃業してしまうという、経済的損失が多く発生している可能性が高いのです。

  8. 中小企業のM&Aは、生産性向上に寄与。今後はマッチング強化が課題。

    事業承継は重大で手が付けにくい課題ですが、同時に大きなチャンスでもあります。

    また、近年は譲渡理由として後継者問題に限らず、戦略的資本提携を目的とした企業譲渡も多くなってきています。

    【事例:設計製造業】大企業で継続できなくなった事業や倒産した企業の事業、後継者難の企業の事業で、自社の事業と親和性の高い事業等を3社から取得。取得した技術と自社技術とを組み合わせてシナジーを発揮し、新たな機器を開発。グループ全体の売上・収益向上につながっている。

まとめ

皆様の会社にも当てはまる課題があるのではないでしょうか。

中小企業白書は、書店又はネットでお買い求めいただくか、中小企業庁のWebページにて読むことができます。(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/

熊本県下では、有効求人倍率が1.75倍(2018年5月)と全国平均を上回る人手不足となっています。また、資本力で大企業に劣る中小企業では、限られた経営資源を最大限に活用することが重要となってきます。そのような中で、生産性向上に向けた取り組みは、時流に関わらず常に追求していく必要があるでしょう。

弊所でも、生産性向上に向けた取組みを積極的に推進しています。

  • IT導入サポート

    Fintechや会計・給与・勤怠管理のクラウドシステム活用による事務負担軽減、電子契約書の導入、その他ITシステム導入による業務効率化等

  • 業務見直しによる効率化

    TOCによるボトルネックの洗い出しと業務効率化、MAS監査による課題の見える化等

  • 事業承継・M&A支援

    後継課題に関するアドバイス、事業承継塾等による円滑な経営承継サポート

    M&Aマッチング業務、M&A実行支援業務等(日本M&A協会九州支部長)

上記の他にも経営課題解決に役立つサービスを多数取り揃えております。

まずは弊所担当者までお気軽にご相談ください。

【優和コンサルティング 吉本千剛】

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