実例から学ぶ税務の核心〈第24回〉平成30年度税制改正による一般社団法人に対する相続税課税の創設

週刊税務通信 No.3526 平成30年10月8日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第24回>

平成30年度税制改正による一般社団法人に対する相続税課税の創設

解説

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

相続税の節税効果が見込めるものとして非常に注目度の高かった一般社団法人等を利用したスキームだが,ついに相続税課税が行われることになった。今までになかった課税の仕組みを採用しているので,しっかり理解してしまいたい。

1 理事死亡時の租税回避防止措置の創設

白井)  平成30年度税制改正のうち,意外性という点で非常にインパクトのあった改正が,一般社団法人の純資産に相続税を課税する制度の創設ではないでしょうか。なお,本稿では一般社団法人を前提としますが,本制度には一般財団法人も含まれます。

濱田)  ただ,以前から何らかの改正があるのではないかとの指摘はありました。今回のような課税の仕組みをとったことが意外だった,という意味ですね。

岡野)  相続税の節税目的の利用は【例】のようなケースが典型です。

内藤)  一般社団法人には持分が存在しないので,内部留保を蓄えても個人財産の増加には繋がりません。これが株式会社でしたら,内部留保の増加は株主の株価の値上がりとして反映されます。

岡野)  平成18年の公益法人制度改革以来,一般社団法人や一般財団法人は相続税を大胆に節税するために利用できる法人として注目されてきました。前回の家なき子特例もそうですが,便利な節税手法として雑誌や書籍,専門家のブログなどで盛んに紹介されてきました。

村木)  一般社団法人は公益性が要求されず,登記だけで誰にでも設立が可能です。事業目的にも制限がありません。新設される一般社団法人は増加し続けています。2016年に新設された一般社団法人の数は5,996で,前年から8%増加しています。8年連続で過去最多を更新しているとのことで,増加率8%は主な法人格別でトップです。構成比も4.7%まで増えています(税理士新聞 2017年9月15日 第1568号)。

濱田)  そこで,一般社団法人に財産を保有させ,家族で代々,実質的な資産の承継が行われる可能性がある場合には,同族理事の死亡を課税時期として,一般社団法人に相続税を課する制度が創設されることになりました。

白井)   相続税法66条の2 が新設され,具体的な要件は以下のようになっています。

一般社団法人等(公益社団法人,非営利型法人などを除く。)の理事である者(当該一般社団法人等の理事でなくなった日から5年を経過していない者を含む。)が死亡した場合において,その一般社団法人等が特定一般社団法人等(次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいう。)に該当するときは,その特定一般社団法人等が,その被相続人の相続開始の時における当該特定一般社団法人等の純資産額をその時における同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして,当該特定一般社団法人等に相続税を課する。

①  相続開始の直前における同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超えること。
②  相続開始前5年以内において,同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
村木)  要件を箇条書きにすると次のようにまとめられます。

1.公益社団・財団法人,非営利型法人は規制の対象外

2.相続開始直前に同族理事の割合が2分の1を超える一般社団法人もしくは,相続開始前5年内において,同族理事の割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上の一般社団法人(特定一般社団法人等)が対象

3.同族理事が死亡した時に課税

4.同族理事には,理事でなくなってから5年を経過していない者を含む

5.純資産額を相続開始時の同族理事数に1を加えた数で除した金額を遺贈で取得したとみなす

(以下略)

(熊本本部スタッフ)