実例から学ぶ税務の核心〈第28回〉副業と家事関連費

週刊税務通信 No.3543 平成31年2月11日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第28回>

副業と家事関連費

解説

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

副業を規制する時代から,容認する時代に入りつつあるせいか,副業の申告が必要な関与先の対応が徐々に増えつつあるとの認識がある。裁決などに登場した事案の位置づけを確認しつつ,税理士としてどうあるべきかを含めて議論してみた。

1 副業と事業所得

内藤)  これから1ヶ月間は所得税確定申告真っ盛りです。今回は,その確定申告から副業と家事関連費について取り上げてみたいと思います。

白井)  一昨年の今頃の時期でしたか。NHKの番組で,サラリーマンの副業を事業所得とし,その損失を給与所得と通算すると節税になるということをやっていました。我々税理士からすると,首をかしげたくなるような内容でしたが,一般的には副業の損失は当然に損益通算ができるとの理解なのでしょうね。

濱田)  そう感じることが多いですね。インターネットの情報は玉石混交ですが,石に分類されるものとして,開業届さえ出しておけば大丈夫なんていうものもあります。

村木)  確かに,事業所得と雑所得の明確な基準はありませんので,都合良く事業所得と判断しているのでしょうね。不動産所得や競走馬の保有に係る所得のように形式基準があればいいのですが,全ての業種について形式基準を設けるのは無理なのでしょう。

岡野)  裁判例では,「自己の計算と危険において独立して営まれ,営利性,有償性を有するもの」が事業所得と示されていますが,この実質基準による判断は税理士でも難しいですね。

内藤)  それは税務調査官も同じですね。

白井)  ただ,税務調査は後から,数年分まとめて行われますから,単年での判断をする税理士より理由付けがしやすいのも事実です。

濱田)  我々は,現時点での情報から判断をしなければならないので,納税者の方から事業所得と判断するための理由付けがほしいところです。

村木)  よく聞く話が,副業が軌道に乗ったら脱サラするつもりだと。それなら,脱サラしてから事業所得とすればいいのですが,大半は聞いてもらえませんね。

内藤)  まあ,納税者は自分には税務調査がないと思っているのでしょうね。

白井)  最近は,副業の種類が多くなりましたね。YouTuberやブロガー,オークションでの物品販売など,少し前では考えられないものが登場してきています。民泊も増加している副業ですね。

濱田)  民泊は役務提供が加わるので,資産性所得である不動産所得ではなく雑所得ですから,損益通算の論点は出てこないので気楽ですけど。

村木)  ところで,国税庁から発表された「平成29事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」を見ると,「インターネット取引を行っている個人の調査状況」という項目があり,ネット通販616件,ネットオークション435件,ネット広告241件など2,015件の税務調査が行われたとされています。

岡野)  1件当たりの追徴税額186万円です。「平成30事務年度においても積極的に調査を実施します。」と国税庁の意気込みが伝わってきますね。

白井)  平成31年度税制改正では,情報照会手続の整備の項目があり,事業者等に対し個人情報の報告を求めることができることとなります。そして,拒否又は虚偽報告には罰則が設けられている点には注意が必要です。

村木)  この改正は平成32年(2020年)1月1日以後に行う報告の求めが対象となっています。過去の暗号資産(仮想通貨)に係る所得には,これを待って手が付けられるのでしょう。

(以下略)

(熊本本部スタッフ)