実例から学ぶ税務の核心〈第31回〉条文から読む個人版事業承継税制

週刊税務通信 No.3555 令和1年5月13日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第31回>

条文から読む個人版事業承継税制

解説

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

個人版事業承継税制については,法案成立により,税制改正大綱段階では不明確だった部分の取扱いが明らかになっている。特定事業用資産の範囲・複数事業の取扱い・小規模宅地特例との競合関係などについて確認してみたい。

濱田)  今回は平成31年度税制改正で新たに導入されることになった個人版事業承継税制にスポットを当てて,今国会で成立した条文を確認しつつ議論していくことに致しましょう。

内藤)  個人版事業承継税制の条文のつくりは法人版と似たところが多くなっていますね。ちなみに,個人版の租税特別措置法の条文構成は次の通りです。

70条の6の8 個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除
70条の6の9 個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例
70条の6の10 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
白井)  法人版(特例制度)の条文の並びは次でした。微妙に条文構成が異なりますね。

70条の7の5 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例
70条の7の6 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例
70条の7の7 非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例
70条の7の8 非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除の特例
岡野)  法人版では,「贈与税の納税猶予」→「相続税の納税猶予」→「みなし相続」→「みなし相続の場合の納税猶予への切替」の順番に並んでいた条文が,個人版では,「贈与税の納税猶予」→「みなし相続」→「相続税の納税猶予」となって,一つ構成条文が減っていますね。どこに行っちゃったのでしょうか。

内藤)  個人版では経営承継期間がなくなり,みなし相続による相続税の納税猶予との調整規定として1条設ける必要がなくなりました。しかし,必要な部分は, 措置法70条の6の10 第30項に挿入されています。法人版でいうところの,「 措置法70条の7の6 」と「 措置法70条の7の8 」が一緒の条文となった形です。だから,条文の並びも法人版とは異なっているわけですね。

1 贈与税の納税猶予の概要
岡野)  まずは,贈与税の納税猶予から制度の概要をながめてみましょう。

適用対象期間は平成31年(2019年)1月1日から令和10(2028年)年12月31日までの10年限定です。個人事業主が,特定事業用資産を贈与した場合に,その特定事業用資産に係る贈与税が贈与者の死亡の日まで猶予されます。

内藤)  また,法人版と同様に,平成31年(令和元年)から5年以内に,承継計画について都道府県の確認を受けることが求められます。

村木)  贈与した後には,翌年1月15日までに認定申請を行い,同3月15日までに申告を行うのですね。法人版と同様に,贈与税の申告期限後5年間は毎年,年次報告書と継続届出書をそれぞれ都道府県と税務署に提出する必要があるのでしょうか。

白井)  申告後の手続については,法人版と大きく相違することになっているようです。すなわち,最初の5年間の経営承継期間がなくなり,年次報告書の提出は不要で,3年に1度,税務署へ継続届出書を提出すれば良いということになりました。以下略)

(熊本本部スタッフ)