実例から学ぶ税務の核心〈第32回〉配偶者居住権の税務上の取り扱い

週刊税務通信 No.3559 平成31年6月10日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第32回>

配偶者居住権の税務上の取り扱い

解説

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

民法相続編の改正が税理士実務に与える影響については,自筆証書遺言の要件緩和など,既に開始しているものもある。ここでは,配偶者居住権の考え方と評価との関係について,わかりにくい部分があるので,税理士目線で,利用可能性まで議論してみた。

1 配偶者居住権制度の概要
(1) 配偶者居住権制度とは
白井)  民法相続編の改正で,一番注目されているのが,令和2年(2020年)4月1日以後の相続から設定可能となる配偶者居住権ですね。家族の高齢化に伴い,配偶者の老後の居住が必ずしも保護されない事例が生じたことへの制度的対応策です。

民法

第1028条(配偶者居住権)

被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。

ただし,被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては,この限りでない。

一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

2  居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても,他の者がその共有持分を有するときは,配偶者居住権は,消滅しない。

3  第903条第4項の規定は,配偶者居住権の遺贈について準用する。

第1032条(配偶者による使用及び収益)

(略)

2  配偶者居住権は,譲渡することができない。

(略)

岡野)  配偶者居住権は,配偶者が「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において,(略),その居住していた建物(略)の全部について無償で使用及び収益をする権利」と定義されています。

内藤)  ただし,譲渡できない権利なのですね。ですから,税務上の評価を行わないという整理もあり得るかと思いましたが,流石に,そうはいかないということで,税務上の評価の問題が1つの論点になってきます。

村木)  実は,配偶者居住権の事実上の譲渡はできるようです。立案担当者解説に出てきますので。

配偶者居住権の価値を回収する手段としては,配偶者居住権を放棄することを条件として,これによって利益を受ける居住建物の所有者から金銭の支払を受けるということが考えられ,居住建物の所有者との間でこのような合意が成立すれば,配偶者は,配偶者居住権を事実上換価することができることになる。居住建物の所有者が居住建物を売却したいという希望を持っている場合等には,このような合意が成立することも十分に考えられる。

(出典:「一問一答新しい相続法 ―― 平成30年民法等(相続法)改正,遺言書保管法の解説」堂薗幹一郎・野口宣大編著,商事法務,Q20)

やはり,税務上の評価は必須ですね。

岡野)  実際,財産評価基本通達では評価できないので,特別の定めを定めるように課税庁が主税局に要望していたようです。
(以下略)

(熊本本部スタッフ)