実例から学ぶ税務の核心〈第35回〉ユーシーシーホールディングス事件 その2 買収におけるDDの留意点
週刊税務通信 No.3576 令和1年9月9日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。
実例から学ぶ税務の核心
~ひたむきな税理士たちの研鑽会~
<第35回>
ユーシーシーホールディングス事件 その2 買収におけるDDの留意点
解説
大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾
今回は,第33回( №3563 ・令和元年7月8日号)に引き続き,大阪地裁平成23年7月25日(ユーシーシーホールディングス事件)を取り上げる。M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の怖さを確認する事例として,是非一読頂きたい。
(1) 株式買収(M&A)における一般的な注意事項
濱田) 第33回( №3563 )に引き続き,大阪地裁平成23年7月25日(ユーシーシーホールディングス事件)を取り上げます。前回は,複層化信託について,課税庁の見解を確認しました。
白井) 今回は,株式譲渡契約における表明保証条項違反があるかどうか,また,この条項に基づく補償金の支払請求が可能か,がポイントになります。
本裁判例のポイント
・株式譲渡契約における表明保証条項違反があるかどうか
・この条項に基づく補償金の支払請求が可能か
内藤) 最近はM&Aが流行していますが,本事案のように,自分が売主側の顧問税理士の場合,どういった点に特に気をつけるべきなのでしょうね。
岡野) 売主側として何より気を遣うのは,情報漏洩がないようにすることです。プロジェクトに関わる人間は厳選しますし,万が一何かあったら,話が頓挫するだけでは済まなくなるということを,関与先にも,事務所の職員にも口を酸っぱくして言っています。
村木) あとは,売手も買手も関与先といった利益相反問題ですね。全くの第三者が買収する場合は関係ないですが,相手次第では,要注意です。
濱田) 他には何かありますか。
白井) 税理士の普段の業務は,密室の処理というところがありますから,その場その場の判断を記録で残していないと,後で問われると厳しいものがありますね。
内藤) 税理士事務所によっては,申告書控えしか残していないというところも少なくないですからね。
岡野) あとは,帳簿上では簿外処理になっている事項について,特に注意すべきかなと思います。典型的には,退職給付債務です。税務上は,損金にならないので,計上していない事例も多いですが,株式価値を考える上では,不可欠です。
村木) そうですね。保証債務の問題や土地の地下埋設物の問題など,言い出せば切りがありません。一番言いたいことは,基本,全部を素直に出すということが大事だということです。
白井) 後からでは間に合わない,手遅れだということですね。肝に銘じたいと思います。
(以下略)
(熊本本部スタッフ)
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