実例から学ぶ税務の核心〈第40回〉個人所得税関係~ネット取引の調査事例を中心に

週刊税務通信 No.3592 令和2年2月20日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第40回>

個人所得税関係~ネット取引の調査事例を中心に

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

所得税の確定申告に当たり,調査事例を紹介しながら,特に副業に係る申告について注意すべき事項を紹介する。

1 はじめに

内藤)  毎年,この時期になると,何故か,所得税に関する申告漏れ事件が報道されますね。

濱田)  当局の注意喚起ということなのでしょうか。リーク以外に報道機関が知る術はありませんので,意図的なものと言われていますね。今年はどのような報道があるか興味があります。

村木)  今回は,インターネットを利用した所得についての相談を受けた税理士が,相談者に,こんな事例がありますので承知の上で資料の提供をお願いします,とお渡しできるものを作りたいですね。

岡野)  相談者も,客観的な資料があった方が納得しやすいですからね。

白井)  そのためには,国税庁のほか,各国税局・沖縄国税事務所が公表している調査事績を活用するのがいいでしょう。

2 平成30年度の調査事績の確認

内藤)  では,平成30年度の調査事績を基にみていきましょう。まず,国税庁の報道資料からです。こちらによれば,当局はインターネット取引を行っている個人に対して,資料情報の収集・分析に努め,積極的に調査を実施しているとしています。平成30事務年度において2,127件の実地調査を実施し,1件当たりの申告漏れ所得金額は1,243万円とのことです。

濱田)  ターゲットは,デジタルコンテンツ,ネット通販・オークション,暗号資産,アフィリエイト等のネット広告,民泊などのシェアリングビジネス・サービスです。

村木)  いずれも,広域的・国際的取引が容易,足が速い,取引の実態がわかりにくい,申告手続等になじみのない人の参入が容易,との特徴があります。

岡野)  当局では,インターネット等の公開情報や非公開の有用情報を収集し,これらに基づき課税上問題があると見込まれる納税者を把握しているようです。

白井)  そして,悪質な申告漏れ等が見込まれる納税者に対しては,プラットフォーマー等に反面調査を行ったり,情報提供を受けたりして証拠収集・事実認定を行っています。

内藤)  コンピュータを利用した取引については,証拠隠しに対応する必要があることから,デジタル・フォレンジックも活用しているとのことです。

濱田)  デジタル・フォレンジックというのは,コンピュータなどの電子機器に残る様々な記録を収集・分析し,取引内容を明らかにする技術です。コンピュータ鑑識といえばわかりやすいでしょうか。次のような法人税の査察事案があります。

H社は,インターネットや各種メディアを利用して自社商品を販売し,多額の利益を得ていたものですが,不正加担者と通謀し,同人の主宰会社に対して架空の広告宣伝費等を計上する方法により法人税を免れ,同会社に送金した資金を現金でバックさせるなどして還流させていました。

本事案では,デジタルフォレンジックツールを使用して,スマートフォン内のデータを解析し,不正資金の還流の事実を解明しました。

国税庁「平成30年度 査察の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/sasatsu/h30_sasatsu.pdf

村木)  事案次第では,想像していたより,踏み込んだ調査を行っているのですね。

岡野)  平成29年度の調査事績には,インターネット取引区分別に調査件数が明らかにされています。この数値を見ると,インターネット取引全般に偏りなく調査がされているとの印象を受けます。

(以下略)

(熊本本部スタッフ)