実例から学ぶ税務の核心〈第42回〉非営利型法人における特別の利益供与否認

週刊税務通信 No.3601 令和2年4月13日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第42回>

非営利型法人における特別の利益供与否認
大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

平成30年に新聞報道された一般社団法人の巨額の申告漏れ事件について,国税不服審判所の未公表裁決例が出されている。一般法人の課税関係を知る上で,極めて重要な事例であり,是非確認しておきたい。

1 注目裁決が研究会会員サイトに収録されていた

濱田)  ずいぶんあとで気がついたのですが,新聞報道で話題になった注目の裁決が既に研究会会員サイト ※ に収録されていたのですね。

令和元年5月7日裁決(名裁(法)平30第32号)

※ 編集部注:弊社会員制度“税務研究会”の会員のみが閲覧可能のサービス。国税不服審判所の「公表裁決事例」「公表裁決事例要旨」が公表される前の時期から,一定の裁決を会員専用のWebサイトに収録。

白井)  本当ですね。私も気が付きませんでした。税務通信データベースの利用者ならではの恩典なので,活用しないと損ですね。

ポイント 研究会会員サイトでは,有用な未公表裁決が収録されている。

2 事案の概要

演習場地主,100億円申告漏れ 陸自・東富士,制度変更

中日新聞 2018年6月8日 朝刊

富士山の裾野にある陸上自衛隊東富士演習場(静岡県御殿場市など)に土地を貸している地元の10団体が,名古屋国税局の税務調査を受け,防衛省からの賃貸料収入をめぐって総額100億円超の法人所得の申告漏れを指摘されていたことが分かった。国の公益法人制度改革に伴い,従来は非課税だった賃貸料収入が課税対象とされた。過少申告加算税を含めた追徴課税額は,20数億円に上るとみられる。

…(略)…

信用調査会社などによると,各団体は,防衛省に貸している「共有地」の地権者にあたる。演習場周辺に住む住民らが会員で,市職員が運営に関わる団体もある。防衛省からの賃貸料収入は,地元老人会や消防団への助成,学校の備品購入などに充てている。

10団体はかつて,公益法人に認定され,賃料収入は自動的に非課税とされていた。国の制度改革に伴って2012~14年,「非営利型」一般社団・財団法人へ移行。課税されるかどうかは,国税当局の判断に委ねられることになった。

公益性が認められれば非課税となるが,今回の税務調査では認められなかった。支援金や記念品の配布先が,地元に限られている点が問題視されたとみられる。ある団体は,地元の高齢者への敬老祝い金を「特定の個人への利益分配」と指摘されたという。

各団体とも,17年以前の過去5年分をさかのぼって賃貸料収入に課税されたもよう。

…(略)…

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018060802000086.html(リンク切れ)

内藤)  本事件は,非営利型法人として一般社団法人が収益事業のみの法人税申告を行っていたところ,非営利型法人の要件に該当しないとして,法人税法上の法人区分が「普通法人」として取り扱われることになり,全所得課税されるべきものとして更正処分を受けてしまったものです。

岡野)  本件の否認原因は,個人に対して特別の利益を供与していたと認定されたところにあります。ただ,この特別の利益供与否認の怖さについて,多くの税理士は理解していません。

村木)  そうなんです。通常の税務調査では,何か経済的利益供与について課税が生じるとしても,課税所得の追加発生は,たかだか,経済的利益供与の額に過ぎません。しかし,この特別の利益供与否認は,極論すると10万円の否認が10億円の否認に変貌してしまうわけです。

ポイント 非営利型法人における特別の利益供与についての指摘は,通常の経済的利益課税の感覚とは全く別次元の怖さがある。

(以下略)

(熊本本部スタッフ)