実例から学ぶ税務の核心〈第10回〉自社株評価通達の改正
週刊税務通信 №3461 平成29年6月12日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。
実例 から学ぶ 税務 の核心
~ひたむきな税理士たちの研鑽会~
<第10回>
自社株評価通達の改正
解説
大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾
1 自社株評価通達の改正とその意義
自社株評価通達が改正され,平成29年分の評価から適用されることとなった。なかには,影響が大きな項目や,うっかりしやすい項目もある。実務家として対応が必要な事項を中心に,ポイントを確認しておきたいところだ。
1 自社株評価通達の改正とその意義
白井) 自社株評価の財産評価基本通達が,パブリックコメントを経て改正されました。パブリックコメントからの変更はありませんでしたが,改正点や影響を確認しておきましょう。
村木) 今回の改正は,租税回避事案の穴塞ぎを念頭に置きつつ,全般的には,財産評価の適正化を図ったという意味で,制度の合理化との位置づけが可能でしょう。
岡野) 財産評価の適正化というのは,要するに,時価と評価通達の評価額との間に乖離が生じる場合があるのを是正したとの意味ですね。
村木) そのように理解しています。今回の改正対象ではありませんが,この後予定されている広大地評価通達の改正が典型例でしょう。
白井) ちなみに,株式保有特定会社の判定基準に新株予約権付社債を加えるとの改正も,この広大地評価見直しと同時期です。
濱田) なるほど。そちらは,平成30年1月以後の適用が予定されているのでしたね。今回の自社株評価通達の改正は,いつから適用されるのでしょうか。
内藤) 平成29年分からとされています。要するに,平成29年1月1日以後の財産取得分については,改正後の通達が適用されるわけですね。
白井) 遡及立法もとい遡及通達って,いいのですか。
村木) やはり,租税回避事案への対応があるので,遡及適用を是としているのでしょうね。
内藤) ただ,遡及立法禁止というのは,納税者に不利になる取扱いの場合に問題になるのですよね。今回の場合,どちらとも言えない部分もありますが,概ね納税者有利と思われる規定が多いようですので,あまり目くじらを立てる必要はないように思います。
村木) 一般論では同意です。ただ,遡及規定にしないと,やはり,悪い人たちが,今から損出しをして評価引下げを図るということもあるように思うのです。
岡野) なるほど。どちらにせよ,古い頭で判断していると,いきなり現場で間違えるよ,ということですね。早速,我々も頭を切り替えていきましょうか。
(以下略)
(熊本本部スタッフ)
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