実例から学ぶ税務の核心〈第25回〉法人税及び消費税における減価償却資産の取得時期が問題となった事例

週刊税務通信 No.3531 平成30年11月12日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第25回>

平成30年度税制改正による一般社団法人に対する相続税課税の創設

解説

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

固定資産の減価償却開始時期は,税務調査で問題になりやすい。とくに,期末付近での納品や事業供用は,特別償却や税額控除,消費税の仕入税額控除の適用年度の判断において慎重になる。このような古くからある問題について,注目されるべき判決等が出ているので,確認しておきたい。

1 平成30年3月6日東京地裁判決~法人税における取得時期が問題となった事例

(1)概要

村木)  固定資産の減価償却は,その資産を事業の用に供した時から開始されます( 法令59 )。これは,実務家であればだれもが知っていることですが,固定資産を「取得」し,その後に「事業供用」する,というのが通常の考え方だと思います。この「取得」という部分をめぐって,面白い判決が出たのですね。

濱田)  そうなんです。それが,平成30年3月6日の東京地裁判決です。

機械装置である製品格納自動倉庫システムを請負契約で取得し,期末までに納品された。ところが,不具合が生じて,検収が翌期にズレこんだ。納税者は,期中に事業供用が済んだものとして申告しましたが,税務署は,期末時点で取得していないとして更正処分をした,というのが概要です。

白井)  異議申立ては却下され,不服審判所に持ち込むも請求棄却とされ,東京地裁に訴訟提起した,ということのようですね。

内藤)  根拠条文は 法人税法31条 ですね。有名な条文ですが,念のため,条文を確認しておきましょう。

第31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)

内国法人の 各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき その償却費として第22条第3項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は,その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(#1)のうち,その取得をした日及びその種類の区分に応じ,償却費が毎年同一となる償却の方法,償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(#2)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(#3)に達するまでの金額とする。

#1:以下この条において「損金経理額」という。
#2:償却の方法を選定しなかつた場合には,償却の方法のうち政令で定める方法
#3:次項において「償却限度額」という。

冒頭の「内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき」が,課税庁の否認根拠になっています。

取得とは,所有権の移転であり,それは完成引渡しを受けた時だと。検収書に押印した時が完成引渡し(5月27日)であり,残代金支払時(7月10日)が所有権の移転であるとしています。

ポイント  課税庁は,完成引渡し時と所有権の移転時のいずれを取得時期とするのか,明確にしていない。(裁判所も同様)

岡野)  ということは,償却が開始される事業の用に供したのがいつか,という議論ではなく,そもそも取得していない,31条の言葉でいうと「有する減価償却資産」がないじゃないか,という否認なのですね。

村木)  そのようです。減価償却資産を取得していることが大前提でしょう,というのが税務署側の主張です。事業供用しているか否かは,争点になっていません。

内藤)  ただ,この案件は,この機械装置に係る特別償却の適用年度が問題になっていますので,本来は措置法で議論すべきですが,措置法も同じように「取得し,事業の用に供した場合」という条文になっていますので,31条で検討しても問題ないでしょう。

(以下略)

(熊本本部スタッフ)