実例から学ぶ税務の核心〈第36回〉令和元年の年末調整における注意点

週刊税務通信 No.3580 令和1年11月11日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第36回>

令和元年の年末調整における注意点

解説

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

本年も年末調整の時期が近づいてきた。毎年同じような作業をする年末調整であるが,特に注意したい事項をまとめてみた。また,今年の場合は,平成30年度改正による令和2年施行改正を適用した令和2年分扶養控除等申告書の記載も必要になる。改正による影響点を確認しておいてほしい。

内藤)  今年も年末調整の季節が近づいてきましたね。今回は,令和元年の年末調整に当たり,雇用主側で注意したい事項についてみていきたいと思います。

白井)  まず,年末調整関係書類を確認しておきます。

下図のとおり,4種類の申告書があり,これら申告書の提出により右側の控除が受けられることになります。

○令和元年分の年末調整関係書類

申 告 書 控   除
1 平成31年(2019年)分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 扶養控除,障害者控除,寡婦控除,寡夫控除,勤労学生控除,基礎控除
2 令和元年分 給与所得者の配偶者控除等申告書 配偶者控除,配偶者特別控除
3 令和元年分 給与所得者の保険料控除申告書 生命保険料控除,地震保険料控除,社会保険料控除(申告分),小規模企業共済等掛金控除(申告分)
4 令和元年分 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
(1) 平成31年(2019年)分 給与所得者の扶養控除等申告書
これらのうち,「平成31年(2019年)分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は昨年度の年末調整の際,提出がされています。

岡野)  年の中途で採用した従業員は,入社後,最初に給与等の支払をする前に提出がされているはずです。

村木)  提出がされていなければ早急に用意すべきですね。

濱田)  もし,調査時に扶養控除等申告書を提示できないとどうなるのでしょうか。

内藤)  原則はアウトです。後から提出する場合,雇用者側で勝手に書いて出すと危険です。現場で提示できず,後出ししたらインチキで本人が提出していないとして,乙欄の税額による納税告知処分がされた裁決があります。

(給与所得の源泉徴収/適用税率表) 扶養控除等申告書を受理していないと認められる従業員に支払った給与については,源泉徴収税額表(月額表)の乙欄を適用して税額を算出すべきであるとした事例

(平成25年1月から平成26年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分・棄却・平30-02-07裁決)

【大裁(諸)平29-51】TAINS F0-1-923

4 争点に対する判断

(1) 認定事実

原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば,次の事実が認められる。

イ (省略)

ロ 本件各扶養控除等申告書の記載内容及び保管状況等

(イ) (省略) これらのうち手書きの「■」の文字についてみると,本件扶養控除等申告書(平成25年分)の「世帯主の氏名」欄及び本件扶養控除等申告書(平成26年分)の「控除対象配偶者」の「氏名」欄に記載されたものではいずれも,「■」の部分の第一画と第三画の長さがそれほど変わらず,その他の欄に記載されたものではいずれも,「■」の部分の第三画の長さが第一画の長さよりやや長いものの2倍には満たない。

また,手書きの「■」の文字についてみると,いずれも人偏(全2画)が二筆で書かれている。

さらに,「■■」の印影についてみると,いずれも「■■」という文字が直径約0.9センチメートルの円の中にあり,「■」の文字の「■」の部分は,第一画が第三画よりも長い。

加えて,手書きの「■」の文字(全4画)についてみると,いずれも四筆で書かれている。

(ロ) (省略)

ハ 本件従業員の当審判所に対する答述等

本件従業員は,平成29年6月30日,当審判所に対し,請求人に本件各扶養控除等申告書を提出したかどうか記憶がない旨答述し,その旨記載された質問調書(以下「本件質問書」という。)の「答述者」の「氏名」欄に「■■■」と手書きし,「■■」の印を押なつした。

これらのうち手書きの「■」の文字についてみると,「■」の部分の第三画の長さが第一画の長さの2倍を超えている。

また,手書きの「■」の文字についてみると,人偏の第一画と第二画が一筆で書かれている。

さらに,「■■」の印影についてみると,「■■」という文字が直径約1.2センチメートルの円の中にあり,「■」の文字の「■」の部分は,第一画が第三画よりも短い。

加えて,手書きの「■」の文字についてみると,第一画と第二画とが一筆で書かれ,第三画と第四画の横線とが一筆で書かれ,第四画の縦線が省略されている。

村木)  中小の会社や個人事業者の場合,雇用主側が給与ソフトでプレプリントした扶養控除等申告書に三文判を押しているケースもあるようです。調査時に提示できないよりは百倍マシなのでしょうけれども。

岡野)  ただ,先に内藤さんが紹介してくれた事例からすると,原則,従業員本人に押印してもらうべきだと言っておかないといけませんね。

内藤)  はい。少なくとも,インチキだなどとは言われないようにしないと怖いですね。
(以下略)

(熊本本部スタッフ)