実例から学ぶ税務の核心〈第54回〉収益認識会計基準対応と税務申告調整

週刊税務通信 No.3650 令和3年4月12日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第54回>

収益認識会計基準対応と税務申告調整

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

令和4年3月期決算より,上場企業については,収益認識会計基準の強制適用が始まる。この時期だからこそ,顧問税理士として,最低限抑えておくべき点を確認しておきたい。

1 はじめに
1)今回の確認趣旨
濱田)  いつの間にか,上場企業における収益認識会計基準の強制適用が目前に迫ってきました。法人税基本通達の改正時にざっくりと確認したものの,当時は,まだ対岸の火事という気分でした。

内藤)  税務の核心で扱ったのは,平成30年度改正時点での通達改正内容で目につくものでしたね(第22回「収益認識会計基準対応通達を読む」税務通信 №3514 ・2018年7月9日号)。で,一般の税理士にはあまり関係ないとはいえ,上場企業の子会社は関与しているということは時々ありますので,最低限の知識だけは押さえておきたいですね。

白井)  そうですね。今更,会計の知識を一から学ぶ気力はちょっと湧きません。

岡野)  ただ,会社によっては,これまでの収益認識時期を変えなければならない場合があるのですが,どうもあまり議論になっていない論点があるのですね。

村木)  はい。今回はその点と,それ以外に申告調整などで税理士が情報収集しておくべき論点などを押さえる方向で確認していきたいと思います。全ての論点を扱うのではなく,実務の典型論点という感じで確認できればというところです。

ポイント  上場企業以外でも,その子会社の顧問税理士であれば,収益認識会計基準について最低限の知識は必要になる。

2)収益認識会計基準の特徴的処理
濱田)  白井さんが言うように,収益認識会計基準を一から確認するのはなんですが。ざっくりと,特徴だけは確認しておきましょうか。

村木)  まず,契約ベースで取引としての記録が始まることで,契約資産・契約負債なんて今まで見たことがない勘定科目が登場するのが1つですかね。税務上は,なかったものとされる場合が少なくありませんが。

内藤)  私は,会計学で収益控除項目と言われる値引きなどについて,変動対価という概念を持ち出して扱うことが印象的です。ある意味,収益控除項目会計基準と言っても良いくらいな気がします。

岡野)  なるほど。同じことかもしれませんが,見方を変えると,収益按分会計基準とも言えるかもしれません。複数アイテムの財貨・役務をセットで提供する場合に,契約で決められた内訳をわざわざ組み換えて,収益をそれぞれに按分し直す処理が登場します。収益按分会計ないし収益再配賦会計という感じです。

白井)  そういう言い方で言えば,収益認識時期について,従来より遅くなることが多いわけですから,収益遅延認識会計とでも言いたくなる側面がありますね。出荷基準を認めず検収基準しかダメだ,というのはもう最近は聞かなくなりましたが,初期はそういう論調だった記憶です。

濱田)  あとは,総額処理ではなく純額処理すべきものが増える印象ですね。厄介なのは消費税処理では純額処理できない場合が大半だということですが。

内藤)  代理人としての処理なのかどうかという論点ですね。消化仕入れなどは,まさに影響を受けるのでしょう。

岡野)  前回扱ったように,法人税は通達改正によって,収益認識会計基準の内容を相当程度,税務に取り込んでくれましたが,だからこそ,両者の対立局面を意識すべき場合があるのかな,と思うと怖いですね。

村木)  税務の問題を意識する上で,会計の思考をある程度知っておかないと理解できない部分で,これまで税務サイドであまり論じられてなかった部分を中心に確認したいというのが今回の狙いです。

ポイント  収益認識会計基準は,収益控除項目処理,収益再配賦処理,従来と比較しての収益遅延認識,純額取引表示,契約時記帳などの特徴がある。

(注)  「収益控除項目処理,収益再配賦処理,従来と比較しての収益遅延認識」などの用語は収益認識会計基準そのものでは使われていない表現であり,税理士目線でわかりやすく理解するために特徴的表現を抽出している。

(以下略)

(熊本本部スタッフ)