実例から学ぶ税務の核心〈第59回〉町の税理士事務所のための法人税 別表17関係記載の要諦

週刊税務通信 No.3670 令和3年9月13日号に、熊本本部所長・岡野の記事が掲載されました。

実例から学ぶ税務の核心

~ひたむきな税理士たちの研鑽会~

<第59回>

町の税理士事務所のための法人税 別表17関係記載の要諦

大阪勉強会グループ
濱田康宏
岡野訓
内藤忠大
白井一馬
村木慎吾

近年,法人税申告書別表17の記載方法が大きく変わり,提出義務範囲が広がっているが,気がついていない税理士事務所も多いようである。令和3年4月1日以後終了事業年度分より,別表番号も変更されているので,これを機会に,町の税理士事務所目線で,記載のポイントを確認してみたい。

1 はじめに
濱田)  タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)などの別表17関係の記載方法は,近年,一気に難しくなりましたね。いや,以前から完全に理解しているのかと言われると疑問符ですが。

白井)  関与先で出てこなければ触らないので,町の中小企業をメインに対応している税理士事務所には鬼門の1つですね。私も濱田さん同様,あまり自信がありません。

内藤)  とは言え,地方の中小税理士事務所でも,国際税務の基礎部分くらいは理解しておかないといけない時代なのでしょうね。

岡野)  そう思います。ある程度より先は,村木先生のようなスペシャリストに任せるしかありませんが,一切わからないとか,いい加減な知識のままでは,関与先の信頼を失うことになりかねません。

村木)  金融機関等が「詳しい税理士を紹介しましょうか」と言って,顧問先の税理士変更を促す話は聞きます。ただ,変更されてしまった税理士事務所・税理士法人が,酷い処理をしている例があるのも事実です。ここでは,町の税理士事務所目線で別表17関係記載の要諦を押さえていきましょう。

ポイント  金融機関等が顧問税理士変更を打診する契機にならないように研鑽すべし。

2 タックスヘイブン対策税制の大まかな仕組み
村木)  別表17関係の記載に入る前に,タックスヘイブン対策税制の大まかな仕組みを,概念的に確認しておきましょう。現行制度では,対象となる外国関係会社を4つのカテゴリーに分類した上で,その所得を日本親法人の所得と合算する仕組みとしています。

内藤)  まず,ペーパーカンパニーやキャッシュボックスという「特定外国関係会社」に該当するかどうかを判定します。ここに該当してしまうと,あとは租税負担割合でひっかかれば,何も考えずに会社単位で合算課税の対象になります。

岡野)  特定外国関係会社に該当しないことが確認されると,従来からある経済活動基準を満たすかどうかで,会社単位で合算をする「対象外国関係会社」になるかどうかを確認します。

白井)  従来からある,事業基準,実体基準,管理支配基準,非関連者(所在地国)基準の4基準ですね。

濱田)  従来はこれで終わりだったのが,現在では,この先の判定があると。

村木)  そうです。この判定の結果,会社単位での合算をする必要はないとなっても,受取利息等の受動的所得の合算を必要とする「部分対象外国関係会社」に該当するかどうかを確認します。なお,通常はここで終わりますが,外国金融子会社等になる場合もあります。

岡野)  実務で外国金融子会社等に出会うことはそうないでしょうから,ここでは取り扱わなくても良さそうですね。

村木)  そうですね。それで結構です。

濱田)  まとめると,【1】特定外国関係会社になるか,【2】対象外国関係会社になるか,【3】部分対象外国関係会社になるかを,順番に判定していくということになるのですね。

村木)  ただし,租税負担割合の確認作業も残っています。会社単位で合算される,あるいは受動的所得のみ合算される場合であっても,租税負担割合が20%以上であれば救済されるからです。

白井)  受動的所得のみ合算対象となった場合で,租税負担割合が20%未満であれば,救済はないのでしょうか。

村木)  いえ,受動的所得が2,000万円以下若しくは所得金額の5%以下であれば,少額免除規定が適用され,合算は不要です。実務ではこの点の確認作業も必要になります。

ポイント  受動的所得のみ合算対象となる場合でも,少額の場合などは合算不要とする取扱いが用意されている。

(以下略)

(熊本本部スタッフ)